一般の方には分かりにくい「司法書士」と「行政書士」
重なる部分はあるものの、基本的にはどちらかしかできない業務が多い。
会社の設立登記、不動産の名義変更の登記、裁判所提出書類の作成、それに関する相談および書類作成、などは、司法書士(または弁護士)しかできません。
それに対して、
建設業、宅建業などの許認可の申請、在留資格関係の申請は行政書士しかできないと解されます。
※逆にそれ以外の業務(例えば、遺言書作成、遺産分割協議書の作成など)は、司法書士でも対応可。遺産承継業務(相続人全員からの受任により、相続手続き、財産の管理、分配などを行う)については、司法書士(か弁護士)しかできることは、明文化されていません。
このようにどちらかしかできない業務もそれなりにあるのですが、「帰化申請」については、本来は司法書士法から鑑みて「司法書士業務」です。
ただし、司法書士の中で帰化申請を受けている人が少ないので実際にはほとんどが行政書士が受けている。
というのが現状となります。※末尾に司法書士法からの抜粋あり
行政書士は、他士業の法律で定められている業務以外の業務だけを行うことができることになっているので、上記のとおり、帰化申請は法務局に提出する書類の作成にあたり、司法書士法で司法書士業務に定められており、司法書士しかできない業務であるはずですが、
司法書士は難関国家資格であり、行政書士よりかなり人数も少なく、その中で帰化業務を受けている人がほぼいないとなると、行政書士が放っておくはずがなく、現在のように行政書士が受けている、
本当なら司法書士会が黙ってはおけない現状となっています。
本日電話にて
「帰化申請は司法書士もできるんですか? 司法書士と行政書士とどちらも持っているところしかできないのでしょうか? 普通は行政書士なのでしょうか?数はどちらが多いですか?」
といった質問を受けたのですが、返答としては、
帰化申請は司法書士でも行政書士でもできる。どちらも持っていないとできないことはない。(上記のとおり、本来は司法書士しかできない業務ですが、そこまでの説明は省き、ご相談者の必要な情報だけをお伝えしました)
ただし、司法書士でも行政書士でも帰化申請を受任していない、または力をいれていない事務所もある。
数で言えば、行政書士事務所のほうが圧倒的に多いと思われる。それは、司法書士と行政書士の人数は比較にならないぐらい行政書士のほうが多いから。
よって、司法書士か行政書士かではなくて、帰化に力を入れているかどうか、費用やサービス、司法書士・行政書士などの方針・性質などを調べて総合的に選ぶのがよい。
とお応えしました。
そうはお応えしたものの、行政書士は人数が多いのと資格の難易度が低く容易に取得できるため、幅広いレベルの行政書士が存在し、中には驚くような対応をする人がおり、そんな事務所に依頼したご依頼者が当職に再依頼されるケースが後を絶ちません。
具体的には、帰化を受けるだけ受けて申請せずに半年~1年以上放置したり、帰化についてあまりご存じでないご依頼者に、事実と違う帰化の要件や必要書類をつきつけ、時間稼ぎをしたり、最初にろくに要件も確認せず受けて、途中でできないと放り出されたり、帰化の専門家として信じられないような仕打ちが普通に行われていることに憤りを覚えることが少なくないのです。
全体的な割合としてはそのような行政書士は多くないかもしれませんが、実際にそういった相談が頻繁にあり、不思議なことに司法書士に依頼されて同様の相談は皆無でした。司法書士は資格の難易度も非常に高く、人数も少なく、ある一定のレベル以上の人しかいないという印象です。
司法書士と行政書士。
名前が似ているので一般の方にはどちらに頼んでいいか分かりにくいですよね!
そういう時は、当事務所のように司法書士と行政書士の兼業の事務所に一度どちらの業務にあたるかをご相談して頂いてもいいかもしれません。
司法書士法(抜粋)
第三条 司法書士は、この法律の定めるところにより、他人の依頼を受けて、次に掲げる事務を行うことを業とする。
二 法務局又は地方法務局に提出し、又は提供する書類又は電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。第四号において同じ。)を作成すること。ただし、同号に掲げる事務を除く。
悠里司法書士・行政書士事務所(大阪) 所長 司法書士・行政書士 前川