法定相続分での相続登記の注意点

相続による名義変更(相続登記)をするとき、多くの場合は遺産分割により相続人中の1人が相続するか、法定相続分とは違った持分で共有にするかといった方法なのですが、たまに法定相続分どおりでの相続登記のご相談もあります。

法定相続分どおりに登記を変更する場合は、相続人の1人を申請人として手続きをすることができるので、他の相続人が協力してくれないときでも、登記は可能です。

ただ、ここで気をつけなければいけないのは、申請人となった相続人にしか登記識別情報(権利証にあたるもの)が発行されない点です。

 

例えば、兄弟姉妹4人が相続人となっている場合で、協議がうまくいかないけど相続人名義に登記を変更する何らかの理由がある場合、4人の兄弟の1人(例えば長男)から各相続人持分4分の1ずつの共有名義に変更することが可能です。

この場合、申請人となった長男に登記識別情報(権利証)が発行されますが、あとの3人には発行されません。

どういったときに問題が生じるかと言えば、後にこの物件を売ったり、贈与したり処分する局面です。

登記識別情報が発行されていなければ司法書士の「本人確認情報」というものが代わりに必要となります。

この「本人確認情報」は司法書士が所有者(ここでは各相続人の方)に直接面会し、本人確認を十分にした上で、登記名義人に違いないことを司法書士が保証する内容の書類です。

この「本人確認情報」の作成には、費用がかかります(5万円~10万円程度)ので、相続登記を法定相続分で相続人の一人からのみ申請される際には、十分に考慮頂いた上でされるようにお勧め致します。