わたしは、独立前に、2つの司法書士事務所で勤務していた経験があります。
昨年度、それらの事務所の所長(および実質所長)が、相次いで二人とも亡くなりました。
どちらも70歳前半。
早すぎるとしか思えません。
1人は、お酒が好きで、結構飲むタイプの方だったし、わたしが勤務していた当時も肝臓の病気で病院に通われていたので、それほど驚きませんしたが、やはりショックでした。
この事務所は、実際のところは、暇で仕事がなく一日中実務の本を読んで終わるような日もあり、なんで人を雇っているんだろう?と正直不思議でたまりませんでしたが、先生はお酒は好きだけど、人はよく、面倒見がよく、少し不器用なところも含めて少し生意気な言い方ですがかわいい人でした。
もう一人の方は、司法書士の資格はなかったのですが、実質は所長(以下所長と呼びます)で、事務所を経営されていました。
銀行や、信用組合に入っている、不動産決済がメインの事務所でしたので、司法書士の立会業務の実務については、この所長からほとんどを教えてもらったと言っていいぐらいです。
所長は、確かに司法書士の資格はなかったけど、その辺の司法書士よりも多くのそして長い経験を持ち、あらゆるトラブルにも対応し、個人のお客さんの相談にも足繁く訪問したり、本当に親身になって応じていて、そいうった素晴らしい仕事をすることにより、色々な人から信頼を得ている姿にわたしは心から感動し、尊敬していました。
事務所内では、威厳を保つためか、いつも厳しいふりをしていたところも非常に印象に残っています。
中では厳しいけど一歩外に出て一緒に決済に行くときは、
所長が初めて自分で不動産の決済に立ち会ったときに夜眠れなかった話とか、失敗談とか、ぶっちゃけの生の経験談を聞くことができて、そのことは独立して自分で司法書士事務所を経営するようになってからも、非常に役に立っていますし、時点時点で初心にかえるきっかけにもなっています。
所長は、メチャクチャ重くて大きなカバン(一目で司法書士って分かる昭和の司法書士が持ち歩いているカバン)を、肩に斜めがけして、一日中電車で決済や、法務局や、お客さん回りをしていて、いつも、冬でも汗だくで一生懸命な姿が今でも目に浮かびます。
こんな重労働、還暦になってするのはめちゃ大変やん! と心の中で思っていました。
所長が亡くなったことは、その事務所の代表司法書士からのハガキでの連絡で知りました。
実は、同じ事務所に同期合格の司法書士さんがいるのですが(その人も独立して、幅広く活躍しています)、上の通知を受けてあまりにもショックで、連絡を取ってみると、一緒に働いていた補助者(補助者歴半端ないぐらい長い)の人も少し前に亡くなったことを知りました。
その人は、さらに若くおそらく50代後半~60代前半だっと思います。
同じように、重い大きなカバンを下げ、一日中銀行や、法務局、お客さん周りをされていました。
同じ事務所で働いていた同期の司法書士さんは、亡くなった補助者の方ともわたしよりもずっと仲が良かったので、もっとショックを受けているようでした。
「この仕事は長くできない。早死にする。」
と。
もちろんこの同期の司法書士さんはやり手なので、司法書士や事務員を何人も雇い上手にされているので、わたしは心配していませんが、
その言葉には、確かにそうかもしれない と正直思いました。
わたしは、他の司法書士があまりしていないニッチな仕事もしていて、逆に不動産の決済の仕事はとても少なく、あって、月に2.3件という仕事量なので、それほど外回りはしません。
決済のときも、電車で移動ではなく、車で移動ができる環境に運よく恵まれているので、ドアtoドアで、それほど肉体労働にはなりません。
自分で経営するメリットは、仕事の量や、種類などをある程度調整することができる点です。
なるべく、司法書士ができる仕事以外は、補助者、事務員の力を借り、司法書士しかできない仕事のみをするようにしています。
ただ、自分で事務所をしていると、不動産決済にかかわらず、重い責任を常に感じなければならないというところは、避けようがありません。
でも、これは仕方ない。
責任があるから、遣り甲斐もあるし、それに見合った信頼を得られたり、収入を得られたりするわけで、こればかりは負荷がかかりすぎないように自分の精神をコントロールするしかないのです。